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グレイトジャーニー <1> -20ドルのホテル-

文:needlework編集部

行ったことのない国はたくさんありますが、訪れたどの国でも日本人がやらなかったようなことをやってきたとは言えるかもしれません。すでに関係者では有名な話になってしまいましたが(今はもう笑いの種です)、その都市、その地方における最安値といっていいホテルばかりに泊まってきました。写真は、先日宿泊したベトナム ハノイの20ドルホテルです。通路入り口は怪しさ満点に見えるかもしれませんが、エントランス周りの外見は十分なクオリティだと思います。要は、みなさんが思うほどリスクはないんですよ。設備周りが劣悪なケースは確かに多々ありますが、それでももう、どの国にいっても水が出ないとか、お湯が出ないとか、そういうケースの方が少なくなってきてます。それよりも、その都市に生きる人たちの空気とか、エリアの日常を垣間見るという意味では、値段が安いホテルというのが抜群にいいのです。

日本も例外ではありませんが、海外におけるホテルは、特に外資と地元資本とで大きな差があります。同時に、海外におけるセキュリティはお金で買うという感覚もあります。したがって、外資のランクの高いホテルは安全性や信頼性をすべての国で担保していることから価格が高くなります。さらにそこに、お客様の滞在満足度を上げるための人材育成から設備面にいたるあらゆるものへの投資が行われている。ブランドバリューというのは、そうしたすべての品質の結果であることは言うまでもありませんが、このブランドバリューにも価格がつくので、さらに値段が高くなります。価格は必然的についているのです。一方の地元資本は、まず「泊まれる場所」を提供している。同時に、いかに利益率や効率性を重視するかで、最適なコストが実現できる立地に、部屋数を多くし、部屋を小さくし(もちろん特に現代では各国法令遵守が重要なので消防法などはいろいろな観点で”まあまあ”クリアしています)。犠牲になるのは信頼性や安全性ですが、それらは「コストが安くしているから」という理屈でクリアできます。これはもちろん、日本のビジネスホテルなどでも例外ではありませんよね。

というわけで、海外における地元資本の小さな安いホテルは、そこで暮らす人たちの生活圏に限りなく近いところにあるわけです。これが、その国を理解するのに一番良い、と私は感じていますし、実際この行動によって地元企業の人たちと会話した時の親近感や距離感が格段に違ってきます。このような行動について話をすれば、地域のパートナーや初めてお会いする人たちとの会話の内容も全く異なります。これは圧倒的なバリューであり、300ドルのホテルに泊まれば、このバリューを得ることが難しくなります。つまり、20ドルで300ドルを超える圧倒的な価値を購入しているわけです。ちなみに、先日、初めてAirBnBを活用してハノイに行きましたが、あれはそうした感覚をより実感を持って体感できます。地元で暮らすハイエンドな生活者からローエンドまで、それこそ住居に泊まれますから活用する面白さがあるなと感じました。

さて、このようにして私は20ドルのホテルを選んでいます。もちろん、意思決定者としての存在感からすれば、相変わらず多くの人が心配します。自分が動いた後の交渉ごとで動く人たちは、なにも20ドルのホテルを選ぶ必要はありません。そこには役割があります。私はその国でビジネスをするときには、やはりその国の生活を理解したい。つまり、今後もこの行動は変わりませんし、むしろ、10ドルのホテルがあればやはりきっとそちらに行ってしまうのでしょう。