

軸を増やす。 文:needlework編集部
新しいビジネスの軸を増やそうと考えています。といっても、従来のビジネスから離れたことをやるわけではありません。人から聞いた話ですが、ブランドをあえて日本語に訳せば「のれん」であると。ブランディングは歴史を持たない企業が、歴史ある企業たちとの生存競争に勝つために生み出されて手法であり、この「のれん」を最初から感じさせる戦略であると。もちろん、ブランドということについて紐解けば、千差万別、無数の間が方があります。ひとつひとつに意味がありますが、すべてを鵜呑みにすることはなかなか難しい。自分たちの哲学に照らし合わせながら、我々オリジナルのブランドに対する哲学を持つことが重要だと考えています。
さて、となると、ヤマツネのブランドとはなにか。そして、どういうビジネスの軸を作ることが、ブランドの価値を高めてくれるのか。この点が肝心です。そもそも私たちは「ブランド」は品質であると考えることが多くあります。これは、私たちの成長プロセスに起因していると言えます。我々は、靴下の製造工場としてビジネスをスタートしました。しかし、グローバリゼーションが進む中で生産拠点は安価な方への移動し、製造業として国内の縫製業はほとんどがなくなるか、経営革新せざるを得ない状態になりました。そこで私たちは、自社製品はより職人技術を要するものとし、それ以外は国外製造会社と連携して品質管理と物流に特化する経営体制へとシフトすることになります。
特に5本指ソックスがメインの技術だった我々には、社会の変化の恩恵もあり、働く人たちの足元を支えるニーズをキャッチアップしながら、国内大手小売の成長とともにビジネスを拡大させてきたのです。したがって、我々が提供してきているものは品質そのものであるべきだと考えており、それは、製品の品質から、期日に必要な数量が届くという納品品質、さらには我々のスタッフと接した時に感じる品質にいたるまで、あらゆる領域における品質であると考えてきました。むろん、すべてを最高の状態にすることは難易度が高く、今なお品質追求に終わりはなく、また、まだまだ伸ばすべき部分がたくさんあると考えています。
さて、こうした品質向上の一つに、新しい時代の変化に合わせた経営のアップデートがあります。現在私たちは、新しい挑戦に着手しています。それが、海外における自社製品の販売と流通です。しかしまだアイデア段階です。それが、小売になるのか、体験施設のようなものになるのか、物流会社になるのか未知です。靴下という存在は不思議です。そもそも、靴下を常に身につけるような文化が世界中で定着しているかと言えばそうではないのです。となれば、靴下を身につける文化も一緒に作り出していくことが必要になるケースもあるということです。もし、そうしたアプローチが身を結べば、我々のビジネスの存在意義そのものの再認識にもつなげることができるでしょう。つまり、我々全体の品質が向上する価値があるかもしれないのです。
世界にも市場にも、常に可能性があります。我々の品質を高める軸の構築に、全力を注ぎたいと考えています。
